「織物の街」として知られる群馬県桐生市。この地で140年にわたりものづくりを続ける刺繍メーカーが「株式会社 笠盛」だ。IN NATURALが扱うアパレルアイテムの中でも人気を集める「000(トリプル・オゥ)」は、笠盛が手掛けるアクセサリーブランド。なぜ刺繍メーカーがアクセサリーを作ったのか?今回は、伝統のものづくりが紡ぐ珠玉のアクセサリーブランド「000」誕生に秘められたストーリーと、その魅力に迫る。
帯の織物業から刺繍メーカーへ
株式会社 笠盛は、明治10年(1877年)に帯の織物業として桐生市で創業した。戦後は、古典的な帯だけでなく、物資が不足する中でも多くの人にオシャレを楽しんで欲しいとの思いから、高価なシルクの代わりにレーヨンなどを使用し、九州の博多献上帯からインスパイアされた「笠盛献上」という帯を考案する。長年培われた職人技術と時代を読むセンスによって、笠盛献上帯は大ヒットしたが、時代が移り和装の需要が減少すると、帯の織物業者としての笠盛は事業の転換を迫られる。試行錯誤の末、帯の製造で培った「柄を織る技術」を活かし、刺繍メーカーへと転身したのだった。
糸でできたアクセサリーのブランド「000(トリプル・オゥ)」誕生
大手アパレルブランドの刺繍を手掛け、海外に工場を設立するなど、様々な試みを重ねる中で最終的に辿り着いたのが、生地に施す刺繍ではなく、パーツとして独立した「笠盛レース」の開発だった。笠盛レースは、自社ブランドとして出展した海外の展示会にて大手のメゾンブランドにも注目され、好評を博す。そして2010年、刺繍のネックレスを中心とする、糸で紡ぐアクセサリーのブランド「000(トリプル・オゥ)」が誕生した。
球体の刺繍「スフィア」の開発
刺繍のアクセサリーといっても、平面的な刺繍では他と差別化するのは難しい。「何か000ならではの魅力がほしい」そういった技術者の思いと、000のデザイナー片倉氏との思いがピタリと重なった時、刺繍を立体化するというアイデアが生まれたのだった。真珠のように愛されることを願いデザインされたシルクの球体刺繍は「スフィア(珠)」と名付けられ、2015年には群馬グッドデザイン賞も受賞した。
立体刺繍の作業工程は機械で行われるが、その複雑なプログラミング、設計技術は特許を取得している。まず、水に溶ける特殊な不織布に刺繍が施される。針が落ちる点と点をつなぐ糸を放射状に何重にも縫っていくことで、中心が盛り上がり、それが重なることで最終的に球体になる。工房では、夥しい数の機械が常に稼働し、ネックレス1本を完成させるには36,000回もの縫いが行われるという。
000のアクセサリーの魅力
・ストレスフリーな付け心地
000のアクセサリーは、糸でできていることから非常に軽いのが魅力だ。ネックレスはつけている感覚がほとんどなく、重ね付けしても全く疲れない。さらに、金属アレルギーの心配がなく、洗えるという利便性も持ち合わせている。美しいだけでなく、毎日付けていても疲れない、優しくストレスフリーなアクセサリーなのだ。
・熟練の職人にしか生み出せない手仕事の妙
製造自体は機械で行われるが、その裏側には熟練の職人の繊細な技術が不可欠だ。例えば、溶ける布は湿気に敏感だが、一方、糸は乾燥に敏感だ。雨の日は布が緩くなり、乾燥すると糸が切れやすくなる。職人は日々、湿度や気温を加味してミシンを調整し、糸の張り具合を感覚で調整する。機械作業でありながら、職人の「手」と「勘」によって歪みのない美しい球体が生み出されている。
色へのこだわり
000のアクセサリーを手に取ると、その美しい色のバリエーションに魅せられるだろう。金属のアクセサリーではなかなか出せない絶妙なカラーも、糸の染色であれば可能だ。見本の段階では実に600もの色があり、アクセサリーのイメージに合ったカラーを自由自在に作りあげることができる。
000の色へのこだわりは、そのネーミングにも表れている。「旅する色」シリーズは、コロナ禍で人々が旅行できない時期に、せめてアクセサリーを身に着けることで旅を感じてほしいという思いから生まれたカラーだ。「四万ブルー」や「草津グリーン」など、スタッフの思い入れのある国や土地をイメージして名付けられたカラーは、身に着けるだけでその土地の空気感が伝わってくる。
000のブランド哲学
積み上げてきた伝統を大切にしながらも、既成概念にとらわれず「0(ゼロ)」から自由な発想でアクセサリーを作りたい。そんな気持ちが込められた「000」というブランド名。まさに、糸でできたアクセサリーはこれまでにない新しい発想の賜物だ。000が目指すのは、決して華美ではないけれど、品が良く、さりげなく日常を彩ることのできるアクセサリー。あくまでベーシックな洋服の邪魔をしないけれど、ファッションのポイントとなる楽しさも持ち合わせている。
IN NATURALでは、そんな000の注目アイテム「スフィア・プラス60(ネックレス)」と「ハニカムブローチ」を、IN NATURALだけの別注カラーでお届けします。(12月中旬発売予定)こだわりぬいた美しいデザインとカラーをぜひお楽しみに。
文: 藤井麻未
■株式会社笠盛
1877年に群馬県桐生市で創業した刺繍メーカー。帯の織物から刺繍へと転換し、長年培った技術と独自のプログラミングを組み合わせ、立体刺繍など新しいものづくりに挑戦し続けている。
WEB:
http://www.kasamori.co.jp/
■000(トリプル・オゥ)
笠盛の伝統技術から生まれたアクセサリーブランド。糸のやさしさを活かした軽やかな着け心地と、独自技術による立体刺繍「スフィア」など、日常に寄り添う上質なアクセサリーを展開している。
WEB:
https://www.000-triple.com/
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