最近、庭づくりに対する考え方が少しずつ変化しています。かつては「いかに美しく眺めの良い庭をつくるか」が重視されてきましたが、現在はコストや管理の手間を考え、「手入れがしやすく、無理なく続けられること」を重視する方も増えています。また、単に外から眺めるだけの庭ではなく、収穫を通じて日常的に関わり、生活の延長線上にある「家庭菜園」づくりも人気を集めています。そこで今回は、暮らしに溶け込む家庭菜園の魅力と、初心者でも無理なく続けられる庭づくりのコツをご紹介します。
ハーブが繋ぐ、暮らしと庭のゆるやかな境界線
庭を暮らしに取り入れる第一歩としておすすめなのが、ハーブの栽培です。ローズマリーやタイムなどのハーブは非常に丈夫で大きくなりすぎず、初心者でも管理が簡単です。グランドカバーとしてタイムで足元を覆い、花木感覚でラベンダーやセージを添えれば、季節ごとに色や香りを楽しめ、庭の表情も豊かになるでしょう。
また、ハーブが庭にあると、「収穫をしに庭に出る」というきっかけも生まれます。「料理の仕上げにハーブを添えよう」「ティータイムにフレッシュハーブティーを淹れよう」といった思いつきが、日常生活と庭をゆるやかに繋ぐ架け橋になります。
育てる際は、日当たりと風通しに注意しましょう。特に梅雨時期は蒸れやすいため、剪定(カット)して風通しを良くすることが、長く健康に育てるポイントです。
景色として美しく、実りを楽しむ「エディブルガーデン」
野菜やハーブを育てる場所を「家庭菜園」として一角に隔離してしまうのではなく、庭に統一感を持たせ、景色の一部として植栽に組み込む「エディブルガーデン(食べられる庭)」というスタイルがあります。見た目の美しさと実用性を両立させるコツは、高さの差によるレイヤー(階層)を意識することです。
• 手前(低層): タイムやチャイブなど、足元を覆う低いハーブ。
• 中間(中層): レタス類や季節の草花。
• 奥(高層): トマトなどの支柱が必要なものや、背の高い花。
このように配置することで、庭全体に自然な奥行きと統一感が生まれます。また、景観を損なわないよう、ビニールマルチや柱などは素材や色で庭の雰囲気になじませ、フレームや通路のデザインを整えることで、雑然とした印象を抑えることができます。
室内に季節を呼び込む「切り花を楽しむ庭」
庭で咲いた花を眺めるだけでなく、室内に飾る、人に分ける、食卓や日常の景色を変える…と、切り花としても楽しんでみましょう。庭の美しさを暮らしの中に循環させてくれます。お店で買うのとは違い、自分の手で育てた季節の花がそばにある暮らしは、心にゆとりを与えてくれるでしょう。「きれいに咲かせなければ」と構える必要はありません。少し不格好な花でも、室内で飾ればそれが味となり、愛着がわくものです。
• ジニア(百日草):暑さに強く、切った後も次々に咲くため、切り花に最適です。
• コスモス:種まきが簡単で、風景としても切り花としても楽しめます。
• ニゲラ:花も実も楽しめて、ドライフラワーにも適しています。
• エキナセア: 夏から秋まで長く咲き、切り花にしても花持ちが良い優等生です。
• 枝もの(ユーカリ、ミモザ、ドウダンツツジ): これらを少し混ぜるだけで、花瓶に飾った時の立体感がぐっと上がります。
• コスモス: 種まきが簡単で、庭の風景としても切り花としても両立します。
• ルドベキア: 非常に丈夫で花数が多いため、初心者の方に最適です。
• 葉もの(ミント、ローズマリー):葉物は脇役と思われがちですが、実はとても重要。花と合わせるだけで完成度が上がります。
これらは、切り花にも適しており、初心者にも育てやすい、おすすめの植物です。
無理なく続けるための、デザインと素材の工夫
庭づくりを続けるためには、できるだけ負担を減らし、管理しやすくする工夫が欠かせません。特におすすめなのが、「レイズドベッド(高床式の花壇)」や「ベジトラグ(足付きプランター)」の活用です。これらを使えば作業姿勢が楽になるため、年齢を問わず手入れがしやすくなります。見た目もすっきりするため、デザインの一部としても取り入れやすいのがメリットです。
また、ハーブや野菜を摘むために庭へ出入りする機会が増えるため、お庭を楽しめる動線を工夫して設計するのがコツです。繁殖力の強いミントやタイムなどは、根が広がりすぎないよう、レンガや石などエッジ材で仕切るか、プランターに植えて管理しましょう。
準備は「春から初夏」がベスト
近年、日本の夏は非常に暑いため、真夏の植え込みは植物に大きなダメージを与えます。新しい庭づくりを始めるなら、春から初夏にかけての時期に植え込みを終えておくのが理想的です。
最初から完璧な庭を目指す必要はありません。自分の環境に合う植物を少しずつ選び、実際に使ってみる。そんな「使って楽しむ庭」という考え方を持つことで、庭は自然と暮らしに溶け込み、日々をより豊かに彩ってくれるはずです。
家庭菜園の魅力
さまざまな種類や色形のあるハーブや野菜類、そして切り花にも使える草花たち。庭の景観を計画する楽しさと、収穫する楽しさの両方を味わえる「家庭菜園」の魅力とコツをお伝えしました。暮らしと庭とをゆるやかに繋ぎ、植物の世話や収穫を通じて家族とのコミュニケーションや子どもの食育にもぴったりです。
使って楽しむ家庭菜園を通じて、日々の暮らしに彩りを添えてみてはいかがでしょうか。
文: 藤井麻未
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